2015年4月5日日曜日

組合の役員(理事等)の変更登記、就任承諾書、印鑑証明書、登録免許税


1 登記事項
組合の役員について、「代表権を有する者の氏名、住所及び資格」が登記事項である。

2.添付書面
(1)就任承諾書について、組合登記令25条において、商業登記法54条が準用されていない。だからといって、その役員と組合の関係が委任に基づくのであれば、原則通り、就任承諾書は添付書類になるものと思われる。
(2)就任承諾書の印鑑の印鑑証明書についてであるが、条文の構造が複雑である。根拠となるのは、各種法人等登記規則5条で、商業登記規則61条1項 、4項及び6項が準用されている。つまり、2項3項(新任の際の印鑑証明書)は準用されていないため、原則として印鑑証明書は不要である。
(3)商業登記規則改正(平成27年2月27日施行)の目玉である、住民票や印鑑証明書や身分証等の「本人との同一性を確認する書類」の添付の要否である。商業登記規則61条5項が準用されていないため、現在のところ「本人との同一性を確認する書類」は不要のようである。なぜ準用しないのかは不明であるが、平成27年2月27日以前の取り扱いから変更はない。ただし、6項は準用されているため辞任の際の印鑑証明書は必要である(※届出された代表印を押せば不要)。
なお、商業登記規則61条5項は準用されているため、代表者選定の議事録等の印鑑証明書は、株式会社等と同様の取り扱いである。

【補足】
 組合の役員変更登記の登録免許税は、課税する根拠がないため非課税である。
 

2015年3月31日火曜日

信用金庫の抵当権設定、取扱店の表示

1.抵当権設定登記の取扱店の表示について
 信用金庫の取扱店の表示については、原則として登記できない。そういう決まりになっているんだから仕方ないと思っていたが、例外がある。
 ある管轄の法務局の登記簿を見たところ、信用金庫の抵当権に堂々と(取扱店〇〇支店)の登記がある。どうやら、その地域の慣行により、現行においても取扱店の表示の登記を認めているらしい。まあ、それはそれで良いとして、その管轄以外の物件が絡む時に困ることになる。例えば次のようなケースがある。

Ⓐその信用金庫が他管轄に抵当権設定登記をする場合
Ⓑその信用金庫が自管轄に設定をし、次いで他管轄に設定をする場合
ⓒその信用金庫が他管轄に設定をし、次いで自管轄に設定をする場合

Ⓐの場合、他管轄が取扱店の表示を認めていなければ登記できない。全国的な取扱いであるから仕方ない。
Ⓑの場合、自管轄に先に抵当権設定登記をするのであるから、その地域の慣行に従って、取扱店の表示の登記をすべきであろう。ただし、他管轄に共同担保の設定(追加)登記を行う際は、原則として、取扱店の表示の登記はされない。
ⓒの場合、悩む。なぜなら、先行する他管轄では原則として取扱店の表示の登記はできないが、自管轄では取扱店の表示の登記ができるからである。この場合は、他管轄で取扱店の表示ができないことをベースにせざるを得ない。というのは、共同担保という性質上、後行の自管轄の設定(追加)の際はベースとなる抵当権の記載内容と同一(前登記証明書の記載と同一)にそろえるべきであるからである。

2.「信用金庫の取扱店の表示の登記はできない」というルールは絶対ではなく、地域により取扱いが異なるようである。
 令和2年から、取扱店の表示の登記が可能になったもようである。登記研究 866号 249頁  2020年4月30日 【質疑応答】
 

2015年3月22日日曜日

共同根抵当権追加設定、合併や承継がある場合


根抵当権の追加設定の場合、根抵当権者たる金融機関に合併や承継があった場合、追加設定の前提として、根抵当権の移転登記をやっておくことは基本である。で、これまでは、根抵当権の移転登記さえかましてあれば、当然に追加設定ができたものと思います。ところが、これができなくなったようである。

『根抵当権者:住所何処何所A銀行(平成〇年〇月〇日合併)の承継会社(又は承継法人))住所何処何所B銀行』として申請書に記載しなくてはいけないようである。さらには、追加設定契約書の根抵当権者の表示にも同様の記載(書き加える)をしなくてはいけないという取扱いのようである。(※なお、この取扱いにより補正になっている。地域により異なるかもしれない。)

で、さらに、当該登記完了後の登記簿上の根抵当権者の表示にも『根抵当権者:(住所何処何所A銀行(平成〇年〇月〇日合併)の承継会社(又は承継法人))住所何処何所B銀行』として登記されることとなっている。

第三百九十八条の九
元本の確定前に根抵当権者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保する。
上記の条文は根抵当権者が法人の場合は、取引きを継続させることが通常であるため、当然に承継法人に債権の範囲の取引きが承継される趣旨である。にもかかわらず、上記のような取扱いになったのはなぜなのだろうか?おそらく、追加設定後の物件について新たに利害関係を持つ者には、従前の被承継会社の取引があったことがわかりにくいということから、そのことを公示することになったのであろうと思われる。(多分)
 

2015年3月17日火曜日

敷地権付区分建物の抵当権抹消、登録免許税、一括申請


敷地権付区分建物の一括申請や登録免許税の基本的なことについて。

マンション(一棟の建物)の2部屋(区分所有)、敷地権1筆につき、共同担保の関係にない抵当権抹消登記等を行う場合は、当事者が同一かつ登記原因が同一であれば、1件の申請が可能である。

この場合の登録免許税の計算方法

×建物:2、敷地:2(各1)、不動産の個数が合計4個となり、登録免許税は4,000円となる。
〇建物:2、敷地:1、不動産の個数が合計3個となり、登録免許税は3,000円となる。

申請を2件に分けると4,000円であるが、1件にまとめると3,000円となるもよう。
 

2015年3月3日火曜日

農業信用基金協会の登録免許税、借り換えの場合


農業信用基金協会の抵当権設定登記の登録免許税は、租税特別措置法第78条の適用があり、本来の税率は債権額の4/1000であるところ1.5/1000に軽減されている。特に地方では、住宅ローンなどで見かけることも多いであろう。以下が根拠条文である。

租税特別措置法第78条第2項  
 昭和四十八年改正法の施行の日の翌日から平成二十七年三月三十一日までの間に次の各号に掲げる法人が当該各号に定める業務又は事業に係る債権を担保するために受ける抵当権の設定の登記又は登録については、その登記又は登録に係る登録免許税の税率は、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、千分の一・五とする。
一  農業信用基金協会 農業信用保証保険法 (昭和三十六年法律第二百四号)第八条第一項第一号 に掲げる業務
で、農業信用保証保険法第八条第一項第一号を調べてみると、次のような規定がある。
会員たる農業者等(その者が農業協同組合である場合には、その組合員を含む。以下この号において同じ。)が次に掲げる資金を借り入れることにより融資機関に対して負担する債務の保証
イ 農業近代化資金
ロ 農業改良資金
ハ 青年等就農資金
二 イからハまでに掲げるもののほか、農業者等の事業又は生活に必要な資金
おそらく住宅ローン(の保証)に軽減税率が適用されるのは、上記イロハニの「ニ」に該当するからである思われる(違うかもしれない)。 では、農業信用基金協会が行う「住宅ローンの借換え」には軽減税率が適用されるのか?非常に悩むところである。ポイントは、上記イロハニの「ニ」に該当するか否かであると思うが、借換えという性質上、その「ニ」に該当する資金なのかどうかがわからない。

結論は、借換えの抵当権設定登記にも軽減税率1.5/1000の適用があるらしい。
理由はよくわからない。
 

2015年3月2日月曜日

調書判決による登記と相続証明書


登記の名義人が死亡、その相続人を被告とし、登記手続きを命じる確定判決を得て登記を行う際は、その判決理由中に「被告らが相続人の全員である」旨又は「相続人は被告らの他にいない」旨の記載があれば、戸籍等の相続証明書を法務局に提出する必要がないとされている。

これは、訴訟において戸籍等の相続証明書が提出され、既に相続人の全員であることが認定されているため、改めて登記の際に法務局に提出する必要はないという趣旨の取り扱いである。

所有権登記名義人死亡の場合の時効取得による所有権移転登記、抵当権や質権、地上権や賃借権の登記名義人死亡の場合の抹消登記など、登記実務において判決による登記は重宝されている。なぜなら、Ⓐ相続人が拡がりすぎて任意に登記の協力が見込めない場合や、Ⓑ権利が古すぎて戸籍等から相続人の全員を完全に証明できない場合など、訴外では処理困難なケースを解決に導くことができるからである。

しかし、落とし穴がある。
「被告〇〇らは、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しない。したがって、被告〇〇らにおいて請求原因事実を争うことを明らかにしないものとして、これを自白したものとみなす。」旨(擬制自白)の記載がある、民事訴訟法254条の調書判決(いわゆる欠席判決)については、相続証明書を法務局に提出不要という取扱いがない。理由は、恣意的な判決による登記を防ぐためだとか。

そうすると、上記Ⓑのように、廃棄処分等により完全に戸籍等が集まらなかった時に非常に困る。苦労して登記手続きを命じる判決を得て、やっと最終目的の登記申請にこぎ着けたもかかわらず、必要書類が揃っていないものとして、問答無用で法務局に却下されるおそれがあるからである。こういったケースでは、擬制自白→調書判決とならなないように何らかの手を打つことになるであろう。

【追記】
改められました。
登記研究 819号 137頁平成28年3月11日 法務省民二第219号 民事局長通達  
 

2015年2月26日木曜日

リフォームローンの抵当権と住宅用家屋証明書


Q:リフォームローンの際に、住宅用家屋証明書を発行してもらい、抵当権設定登記の登録免許税の減税を受けられるのか?
A:租税特別措置法第75条において、「増築を含む」とされているのでその適用はある。

Q:では、どうやって証明するのか?
A:当地では、増築の登記がされた登記事項証明書(又は登記情報)並びに金銭消費貸借契約書又は抵当権設定契約書のコピー等を添付して証明する。(自治体により異なるかもしれない)

以上のとおりの取り扱いがあるのはそれで良いとして、実務上の問題点。
①今回の抵当権設定登記が、リフォームローンであるかどうかがわかりにくい。
外形的に、通常の(減税のない)抵当権設定登記と違いがないのであるから、リフォームローンということに気付かなければ、通常の抵当権設定登記として費用の計算をすることになるであろう。
②増築の登記が行われるのかどうかが事前にわかりにくい。
増築の登記は、土地家屋調査士が行うため、工事完了後にその登記が行われる予定があるのかどうかがわかりにくい。リフォームが行われたとしても、床面積に変更がない場合や面積が小さくなる場合もあり、この場合は、租税特別措置法第75条の適用はない。(※1)
③増築の登記が行われ、表題登記に変更が生じたことを知る機会が遅くなりがち。
抵当権設定登記の申請直前の登記簿を見てはじめてそれを知り、気付いた時には手遅れ(場合によっては不可抗力)ということもあり得る。

そもそも、租税特別措置法第75条「増築を含む」という文言に気付いていない人も割と居るのではないだろうか。リフォームローンの際には、金融機関の融資担当者や土地家屋調査士と綿密に打ち合わせを行っておく必要がある。

※1 必ずしも、増築登記→抵当権設定の順序となるわけでなく、便宜、抵当権設定→増築登記のパターンもある。この場合は、役所に対して登記事項証明書を提出し増築を証明できないため、住宅用家屋証明書を発行してもらえない、つまり、租税特別措置法第75条の適用外になるものと思われる。

【関連】
リフォームと登記
 

2015年2月22日日曜日

リフォームと登記、贈与や移転登記の考察


今流行のリフォームと登記について仮に考察してみたいと思います。

比較的大規模なリフォームは、築数十年など老朽化している場合も多い。そういった場合、建物の名義人が親であったり、資金を出す人と異なる場合もある。では、資金を出す人と、建物の名義人が異なるとどうなるか?

事例:甲太郎さん(父)所有の建物に、その子である乙子さんがリフォームする場合

乙子さんがリフォームした造作等(建築資材など)は、基本的には甲太郎さんの所有となる。なぜなら、民法242条によると、「不動産の所有者は、その不動産に従として【付合】した物の所有権を取得する。」と規定されているからである。つまり、乙子さんから甲太郎さんに贈与したというに考え方になりそうである。

ただし、乙子さんは「その【償金】を請求することができる。」 (民法248条)と規定されている。通常、親子間で償金を請求することは考えていないと思うので、やはり贈与という考え方になりそうである。この場合、リフォームした費用によっては、甲太郎さんに対して高額の贈与税の問題が生じる可能性がある。では、これらの問題をどのようにクリアするのかについて、以下の2つの案を。

リフォーム前に、甲太郎さんから乙子さんに建物を贈与し所有権(持分)移転登記をする。

・老朽化した建物の贈与であれば、固定資産の評価額も低いので贈与税が安く済む。もしくは、基礎控除額(110万円)以内に収まれば贈与税はゼロである。
・贈与後にリフォームすると、自分所有の建物について自己資金でリフォ-ムしただけのことであり、上記の【付合】や【償金】の問題が生じない。
・自己所有となるので住宅ローン減税(控除)の要件(の一つ)をクリアできる。
・甲太郎さんの名義を残すのであれば、持分移転登記を行い共有名義とする。

リフォーム後に、甲太郎さんから乙子さんに建物を代物弁済し所有権(持分)移転登記する。

・上記民法248条によると、乙子さんは甲太郎さんに費用償還請求ができるので、甲太郎さんは請求されると、基本的には応じなけばいけない。そこで、代物(お金でなく建物)で弁済するという考え方である。
・代物弁済をすると、譲渡所得税や贈与税の問題が生じる可能性があるので注意が必要である?
・自己所有となる時期によっては、住宅ローン減税(控除)の問題が生じる?
・共有名義とした方が有利であれば、持分移転登記をする。

※以上のように、司法書士の立場より仮に考察してみたが、税理士(贈与税、住宅ローン減税の論点)、土地家屋調査士(増改築による表示変更登記の必要性)、建築士(建築確認申請の必要性)、金融機関(リフォームローン審査の要件)などなど、各専門家に関わる論点があるため、何を重視するかにより、登記の方法を考える必要がありそうである。

【関連】
リフォームローンと住宅用家屋証明書
 

2015年2月16日月曜日

商業登記規則等の改正、施行日平成27年2月27日


骨子は次の2つ
①役員変更登記(取締役・監査役の就任、代表取締役の辞任)添付書面の改正
⇒設立と取締役等の新任登記(再任は含まない)の局面・代表取締役の辞任の局面
②役員欄への婚姻前の氏の記録
⇒設立と役員変更登記の局面

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00085.html

法務省のこのページが実にわかりやすい。
しかも図解付き。

2015年2月5日木曜日

根抵当権の債務者、表示(氏名や住所)の変更登記


抵当権の債務者の住所変更登記について。

「原因」 年月日住所移転
「変更後の事項」 債務者の住所 何処何所

では、根抵当権の債務者の表示(住所・本店・氏名・商号)変更登記の場合

「原因」 年月日住所移転
「変更後の事項」 債務者 何処何所 何某

要するに、根抵当の場合は債務者と言う大きな「くくり」の変更となるという考え方である。