2015年3月31日火曜日

信用金庫の抵当権設定、取扱店の表示

1.抵当権設定登記の取扱店の表示について
 信用金庫の取扱店の表示については、原則として登記できない。そういう決まりになっているんだから仕方ないと思っていたが、例外がある。
 ある管轄の法務局の登記簿を見たところ、信用金庫の抵当権に堂々と(取扱店〇〇支店)の登記がある。どうやら、その地域の慣行により、現行においても取扱店の表示の登記を認めているらしい。まあ、それはそれで良いとして、その管轄以外の物件が絡む時に困ることになる。例えば次のようなケースがある。

Ⓐその信用金庫が他管轄に抵当権設定登記をする場合
Ⓑその信用金庫が自管轄に設定をし、次いで他管轄に設定をする場合
ⓒその信用金庫が他管轄に設定をし、次いで自管轄に設定をする場合

Ⓐの場合、他管轄が取扱店の表示を認めていなければ登記できない。全国的な取扱いであるから仕方ない。
Ⓑの場合、自管轄に先に抵当権設定登記をするのであるから、その地域の慣行に従って、取扱店の表示の登記をすべきであろう。ただし、他管轄に共同担保の設定(追加)登記を行う際は、原則として、取扱店の表示の登記はされない。
ⓒの場合、悩む。なぜなら、先行する他管轄では原則として取扱店の表示の登記はできないが、自管轄では取扱店の表示の登記ができるからである。この場合は、他管轄で取扱店の表示ができないことをベースにせざるを得ない。というのは、共同担保という性質上、後行の自管轄の設定(追加)の際はベースとなる抵当権の記載内容と同一(前登記証明書の記載と同一)にそろえるべきであるからである。

2.「信用金庫の取扱店の表示の登記はできない」というルールは絶対ではなく、地域により取扱いが異なるようである。
 令和2年から、取扱店の表示の登記が可能になったもようである。登記研究 866号 249頁  2020年4月30日 【質疑応答】
 

2015年3月22日日曜日

共同根抵当権追加設定、合併や承継がある場合


根抵当権の追加設定の場合、根抵当権者たる金融機関に合併や承継があった場合、追加設定の前提として、根抵当権の移転登記をやっておくことは基本である。で、これまでは、根抵当権の移転登記さえかましてあれば、当然に追加設定ができたものと思います。ところが、これができなくなったようである。

『根抵当権者:住所何処何所A銀行(平成〇年〇月〇日合併)の承継会社(又は承継法人))住所何処何所B銀行』として申請書に記載しなくてはいけないようである。さらには、追加設定契約書の根抵当権者の表示にも同様の記載(書き加える)をしなくてはいけないという取扱いのようである。(※なお、この取扱いにより補正になっている。地域により異なるかもしれない。)

で、さらに、当該登記完了後の登記簿上の根抵当権者の表示にも『根抵当権者:(住所何処何所A銀行(平成〇年〇月〇日合併)の承継会社(又は承継法人))住所何処何所B銀行』として登記されることとなっている。

第三百九十八条の九
元本の確定前に根抵当権者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保する。
上記の条文は根抵当権者が法人の場合は、取引きを継続させることが通常であるため、当然に承継法人に債権の範囲の取引きが承継される趣旨である。にもかかわらず、上記のような取扱いになったのはなぜなのだろうか?おそらく、追加設定後の物件について新たに利害関係を持つ者には、従前の被承継会社の取引があったことがわかりにくいということから、そのことを公示することになったのであろうと思われる。(多分)
 

2015年3月17日火曜日

敷地権付区分建物の抵当権抹消、登録免許税、一括申請


敷地権付区分建物の一括申請や登録免許税の基本的なことについて。

マンション(一棟の建物)の2部屋(区分所有)、敷地権1筆につき、共同担保の関係にない抵当権抹消登記等を行う場合は、当事者が同一かつ登記原因が同一であれば、1件の申請が可能である。

この場合の登録免許税の計算方法

×建物:2、敷地:2(各1)、不動産の個数が合計4個となり、登録免許税は4,000円となる。
〇建物:2、敷地:1、不動産の個数が合計3個となり、登録免許税は3,000円となる。

申請を2件に分けると4,000円であるが、1件にまとめると3,000円となるもよう。
 

2015年3月3日火曜日

農業信用基金協会の登録免許税、借り換えの場合


農業信用基金協会の抵当権設定登記の登録免許税は、租税特別措置法第78条の適用があり、本来の税率は債権額の4/1000であるところ1.5/1000に軽減されている。特に地方では、住宅ローンなどで見かけることも多いであろう。以下が根拠条文である。

租税特別措置法第78条第2項  
 昭和四十八年改正法の施行の日の翌日から平成二十七年三月三十一日までの間に次の各号に掲げる法人が当該各号に定める業務又は事業に係る債権を担保するために受ける抵当権の設定の登記又は登録については、その登記又は登録に係る登録免許税の税率は、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、千分の一・五とする。
一  農業信用基金協会 農業信用保証保険法 (昭和三十六年法律第二百四号)第八条第一項第一号 に掲げる業務
で、農業信用保証保険法第八条第一項第一号を調べてみると、次のような規定がある。
会員たる農業者等(その者が農業協同組合である場合には、その組合員を含む。以下この号において同じ。)が次に掲げる資金を借り入れることにより融資機関に対して負担する債務の保証
イ 農業近代化資金
ロ 農業改良資金
ハ 青年等就農資金
二 イからハまでに掲げるもののほか、農業者等の事業又は生活に必要な資金
おそらく住宅ローン(の保証)に軽減税率が適用されるのは、上記イロハニの「ニ」に該当するからである思われる(違うかもしれない)。 では、農業信用基金協会が行う「住宅ローンの借換え」には軽減税率が適用されるのか?非常に悩むところである。ポイントは、上記イロハニの「ニ」に該当するか否かであると思うが、借換えという性質上、その「ニ」に該当する資金なのかどうかがわからない。

結論は、借換えの抵当権設定登記にも軽減税率1.5/1000の適用があるらしい。
理由はよくわからない。
 

2015年3月2日月曜日

調書判決による登記と相続証明書


登記の名義人が死亡、その相続人を被告とし、登記手続きを命じる確定判決を得て登記を行う際は、その判決理由中に「被告らが相続人の全員である」旨又は「相続人は被告らの他にいない」旨の記載があれば、戸籍等の相続証明書を法務局に提出する必要がないとされている。

これは、訴訟において戸籍等の相続証明書が提出され、既に相続人の全員であることが認定されているため、改めて登記の際に法務局に提出する必要はないという趣旨の取り扱いである。

所有権登記名義人死亡の場合の時効取得による所有権移転登記、抵当権や質権、地上権や賃借権の登記名義人死亡の場合の抹消登記など、登記実務において判決による登記は重宝されている。なぜなら、Ⓐ相続人が拡がりすぎて任意に登記の協力が見込めない場合や、Ⓑ権利が古すぎて戸籍等から相続人の全員を完全に証明できない場合など、訴外では処理困難なケースを解決に導くことができるからである。

しかし、落とし穴がある。
「被告〇〇らは、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しない。したがって、被告〇〇らにおいて請求原因事実を争うことを明らかにしないものとして、これを自白したものとみなす。」旨(擬制自白)の記載がある、民事訴訟法254条の調書判決(いわゆる欠席判決)については、相続証明書を法務局に提出不要という取扱いがない。理由は、恣意的な判決による登記を防ぐためだとか。

そうすると、上記Ⓑのように、廃棄処分等により完全に戸籍等が集まらなかった時に非常に困る。苦労して登記手続きを命じる判決を得て、やっと最終目的の登記申請にこぎ着けたもかかわらず、必要書類が揃っていないものとして、問答無用で法務局に却下されるおそれがあるからである。こういったケースでは、擬制自白→調書判決とならなないように何らかの手を打つことになるであろう。

【追記】
改められました。
登記研究 819号 137頁平成28年3月11日 法務省民二第219号 民事局長通達