2023年5月14日日曜日

民法の共有制度の改正(令和5年4月1日施行)

 令和5年4月1日施行の共有制度の改正点について、条文を考察してみました。


(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる 

 

※「変更」とは、性質や形状の物理的変更や処分をいう。 例えば、処分行為として売買、抵当権設定、地上権設定等がある。変更行為として、農地転用等がある。

※第1項 形状又は効用の著しい変更を伴わない「軽微な変更」については、全員の同意が不要となり、各共有者の持分の過半数で足りることとなった。

※第2項 所在等が不明な共有者がいる場合、他の共有者の申立てにより、地方裁判所の裁判により、他の共有者全員の同意をもって、変更や処分ができることになった。


(共有物の管理)

第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない
 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。
 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年
 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年
 建物の賃借権等 三年
 動産の賃借権等 六箇月
 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

 

※「管理」とは、共有物を変更しない限度で、利用や改良をする行為をいう。例えば、賃貸やその契約解除、整地やリフォーム(改造ではないレベル)等がある。

※第2項 所在等が不明な共有者がいる場合、他の共有者の申立てにより、地方裁判所の裁判により、他の共有者全員の過半数をもって、管理に関する事項が決定できることになった。相当期間に賛否を明らかにしない共有者がいる場合も同様である。

※第3項 特別の影響が及ぶ共有があれば、その承諾は必須である。

※第5項 「保存」とは、現状維持をする行為である。例えば、公租公課の支払い、侵害に対する妨害排除、完済した抵当権の抹消登記等がある。


(共有物の管理者)
第二百五十二条の二 共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。
 前項の規定に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

 

 ※管理者の制度が新設された。


(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
 共有物の現物を分割する方法
 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
 前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

 

※協議することができない共有者がある場合についても、共有物分割請求ができることになった。 


第二百五十八条の二 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。
 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から十年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。
 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第一項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から二箇月以内に当該裁判所にしなければならない。

 

※遺産分割については、原則として遺産分割の手続きによる。ただし、相続開始から10年を経過したときは、共有物分割の手続きを採ることも可能。 


(所在等不明共有者の持分の取得)
第二百六十二条の二 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が二人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合であん分してそれぞれ取得させる。
 前項の請求があった持分に係る不動産について第二百五十八条第一項の規定による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が前項の請求を受けた裁判所に同項の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、同項の裁判をすることができない。
 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、第一項の裁判をすることができない。
 第一項の規定により共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。
 前各項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。
※所在等が不明な共有者がいる場合、他の共有者は、裁判所に持分「取得」の裁判を求めることができる。遺産分割事案については、相続開始から10年の経過が必要。

(所在等不明共有者の持分の譲渡)
第二百六十二条の三 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。
 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、前項の裁判をすることができない。
 第一項の裁判により付与された権限に基づき共有者が所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡したときは、所在等不明共有者は、当該譲渡をした共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる。
 前三項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。


 ※所在等不明共有者がいる場合、他の共有者は、裁判所に持分「譲渡」の裁判を求めることができる。ただし、所在等不明共有者を除いた共有者全員で譲渡する必要がある。遺産分割事案については、相続開始から10年の経過が必要。


以上です。

2023年5月7日日曜日

不動産売買の買主が外国籍の永住者である場合の登記名義人

 (例)売買による所有権移転登記⇒抵当権設定登記、買主が永住者である場合について。


1.住宅用家屋証明書

外国籍であっても、住宅として使用するのであれば、問題なく発行される。


2.登記名義人の記載

・通称で登記されるケースが多い(通称の登録があれば)

・注意すべきは、通称の登録をされていない人もいる。

 例えば、通称の登録をしなかった「MICHAEL GODA」氏

✕「MICHAEL GODA」で登記すること(ローマ字不可)

△「マイケル ゴウダ」と代理人が任意に翻訳し登記をする

〇「MICHAEL GODA(マイケル ゴウダ)」と本人に登記書類(設定契約書も)にフリガナを書いてもらい、フリガナで登記をする


(補足1)「マイコウゴダ」と本人がフリガナを書かれた場合、そのまま登記できる。

(補足2)「マイケルゴウダ」と苗字と名前を続けることに違和感がある場合は、便宜「マイケルゴウダ」と読点を用いて登記することができる。※スペースは使えない。

(補足3)「ミッシェルゴウ」と本人が明らかにおかしいフリガナを書かれた場合、法務局から補正がくると思われる。


以上です。

2023年5月6日土曜日

会社法人登記と官報(インターネット版電子官報)

会社法人登記で官報が添付書類となる場合、例えば、合併、資本金の額の減少(減資)等について。

令和5年1月27日付け閣議了解をもって、インターネット版の電子官報が添付可能となりました。

〖以下インターネット版官報サイトより抜粋〗
平成15年7月15日以降の法律、政令等の官報情報と、平成28年4月1日以降の政府調達の官報情報を、PDFデータで無料公開しています。また、直近90日間の官報情報(本紙、号外、政府調達等)は、全て無料で閲覧できます。

  • 令和5年1月27日付け閣議了解(行政手続における官報情報を記録した電磁的記録の活用について)を踏まえ、同日以降、官報を添付書面として提出すべき申請をオンラインで行う際に、官報の代わりにインターネット版官報を提出することができるよう、官報とインターネット版官報の内容の同一性を確保しています。
  • 官報とインターネット版官報の内容の同一性を確保するための取組として、インターネット版官報には、電子署名及びタイムスタンプを付与しています(タイムスタンプの付与は、令和5年1月4日以降の記事を対象。)。
    該当記事を利用する場合は、電子証明書(電子署名及びタイムスタンプ)が有効であることを確認し、改変がないことを確認のうえご利用ください。詳しくは電子証明書の確認方法PDFをご覧ください。

早速やってみました。

①インターネット版官報の当該記事をダウンロードする⇒②念のため署名の確認を行う⇒③会社法人登記電子申請にこのPDFを添付する。(簡単!)

別途申請人(又は代理人)の電子署名をしたり、他のソフトウェア等を組み合わせる必要もありません。

以上です。

2023年5月4日木曜日

本店移転と商号変更(法務局管轄外の経由申請)

いわゆる経由申請の本店移転に商号変更が加わる場合について。
(例)株式会社モモタロウが株式会社サクタロウに商号変更し、京都から大阪へ本店移転する。なお、サクタロウの印鑑を新規に作成する。

1.旧本店京都の申請書
商号欄:旧商号モモタロウ
本店欄:旧本店京都
別紙欄:
「商号」株式会社サクタロウ
「原因年月日」年月日変更
「登記記録に関する事項」年月日大阪に本店移転(※管轄内と異なる)

2.新本店大阪の申請書
商号欄:新商号サクタロウ
本店欄:新本店大阪
別紙欄:
「登記記録に関する事項」
年月日京都から本店移転(※これだけでよい、その他記載は不要となった)

3.旧本店京都の印鑑届
必要。一旦京都でサクタロウ印鑑に改印されるため。
商号欄:新商号サクタロウ
本店欄:京都を書く(←注意)
会社法人等番号:元の番号でよい

4.新本店大阪の印鑑届
当然必要。
会社法人等番号:元の番号でよい。(※管轄外の本店移転により番号が変わらなくなった)

5.印鑑カード交付申請を合わせてする場合
大阪宛のものを京都に提出する。
カード返送用のレターパックは京都に送ると大阪に行くもよう。
会社法人等番号欄は、元の番号でよい。

以上です。